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となりの国

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タダ飯食らいと情報収集にピッタリの日

サンフランシスコ・デ・ロス・ロモを出てハイウェイ45に戻り北上する。

このまま行くとcuota(有料道路)に入ってしまうので、途中で右へ方向転換、

隣に沿って走っているlibre(無料道路)を進むことにした。

libre道路へ行く途中に町があり、そこで地図を見ているとおじさんが話しかけて来た。

だいたいの道を教えてもらい、少し立ち話。

どうやらこっちでは日産が有名らしい。

おじさんの友達に紹介されたが、話題がないため無言ですぐに別れた。

おそらくおじさんは自慢したかったんだと思う。

教えてもらった道を左に曲がり北へ自転車を向けた。

警察がパトカーの中で道路を見張っているが、大丈夫、何も悪いことはしていないはずだ。

この道路を走っているとしょっちゅうクラクションを鳴らされる。

他でもたまに鳴らされるが、時々でしかない。

応援してくれていると思うことにしよう。

しばらく行った先にカフェがあったので、遅い昼食をとるため入店する。

アメリカンな雰囲気そのままに、コーヒーはメキシコで1番うまかった。

それとサンドイッチを注文する。

店の主人が英語で話を振ってきた。

ちょうどいい、情報をもらおう。

この先のLuis Moya(ルイスモジャ)とOjocaliente(オホカリエンテ)という町には悪いやつがいるから危険だよ

と教えてくれた。
警察をよく見かけたのはそのためだったのか。
クラクションももしかしたら注意喚起とこちらを見てくれてるという周りへの警戒だったのかもしれない。

オススメのルートは、さっき通っていた45号線を北上するルートだと言う。

でもcuotaがあるよ

と言うと、大声で笑い出し、

自転車で金を取られたってのは聞いたことがないなぁ

と楽しそうにカタコトの英語で話す。

その様はまさに「はじけるような笑い」で、その笑い方を初めてみた自分はとてもいい印象をもった。

大口を開けて大胆に笑っているその風体は陽気に見えて、なんだかうらやましかった。

言われた通り田舎道を抜け、ハイウェイに戻って来た。

日も暮れかけてきてタイヤもパンクしたので、そのすぐそばにあったCosioの町で1泊することにした。

そこの小さなホテルのオーナーは気さくな人で、値段も安い。

3階の部屋は眺めがいい。

それにしても自転車が心配だ。

1日に1回はパンクしている。

これはタイヤの外側の部分(未だに名前わからず、スペイン語だとallantaとか言ってた気がする)ごと取り替えないとダメだ。

でもエニグマ君(マイ自転車)にピッタリのサイズがどこにもない。

なんとかサカテカスまでもってほしい。

夕食を食べにホテル1階のレストランへ行くと、チキンライスのようなご飯を何杯もおかわりさせてくれた。

さすがに4杯目のときは呆れた顔をしていたが。

食べ終わったあたりで、隣のテーブルからおじいさんがビールをおごってくれるという誘いをうけた。
承諾する。

オーナーも一緒にビールを飲み、テキーラ数杯をもらった。

このおじいさんはここのホテルのボスで、これから向かうサカテカスの大学教授らしい。

むこうはスペイン語とフランス語、こちらは日本語と英語、なかなか噛み合ない。

7年間アメリカで料理人をしていたというオーナーの通訳を交え、なかなか進まない会話が始まった。

教授の息子が最近数学の大会で3位を取ったらしく、自慢しながら

お前は頭がいいのか?

と、ベロンベロンになりながら聞かれたが答えようがなかった。

頭がいいというのは色んな意味があるけど…

などという言葉を日本語以外で話せない。

教授は

ここはお前の家だし、私の家もお前の家だ。サカテカスに来たら私の家に案内しよう。友達になろう。

と、たどたどしい英語で何度も何度も言ってくれた。

ここはお前の家だから、と料理や酒をすべてタダにしてくれた。

ラッキーだ。

教授の家族がむかえに来て、パソコンの通訳サイトで奥さんと会話し、教授の電話番号を教えてもらう。

パソコン翻訳には教授は否定的だった。

なんとなく気持ちはわかる。

その日はいい気分で眠りについた。




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