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となりの国

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湖の浜辺でテント

山の中の宿を昼に出る。

この先すぐに村があり、その分かれ道を右に曲がると大きな湖、トタ湖が姿を現した。

高い位置から見るその湖は対岸が霞むほど広く、青い。

山を登りきった達成感もあいなり、その光景は自分の胸を打った。








他の観光客はみんなその広大な湖を眺め、そして手をYの字に掲げている。

何組もの人達がこれをやっていたのだが、なにか意味があるのだろうか。

なにかのCMの影響か、それとも”湖”と関係しているのか。

同じく高いところの眺めが素晴らしかった ペニョデグアタペ ではそんなことしている人は見なかったはずだ。

さて、トタ湖も見れたし、帰るか。

…と、いきたいところだが、

しかしここで終わらないのが自分の旅行だ。

昨日思い出したことがある。

トタ湖は湖なのに砂浜があると聞いたのだ。

そして前もってキャプチャしておいた地図を眺めると、そこにあったのはPlaja Blanca(プラジャブランカ = 白い砂浜)という名前。

そしてそこがあるのはちょうど真反対の対岸にある。

そこを目指して山を下り降りた。


       ↑ココ



湖の隣を走る。

このあたりは日本の田舎の景色となんら変わらない。

湖のそばなんだからてっきり平地なのだろうと思っていたが、丘陵の端っこがいくつも出っ張っていてそこを通らされ、一筋縄ではいかなかった。



    ↑奥に見えるあんなデコボコを走らされた


ちょうど真ん中あたりにあるAquitania(アキタニア)の町へ入る直前で、タイヤがパンク。

後輪のチューブに大きな切れ込みが入っていたので、新しいチューブに取り替える。

チューブストック残り1つ。

もうすぐ休止かもしれないこの旅で、替えのチューブを買い足すかどうか、悩むところだ。

時間をかけて準備は完了。

ばあさんに荷物をあさられそうになりながら、町へと入る。



街中には宿屋が何軒か見えた。

もしなにかあったらここで泊まることにしよう。




セントロ(中心部)にある教会を覗く。

ステンドグラスがたくさんあり、自分の好みである。

色彩が細かくてまるで絵のようだった。
















教会のすぐそばにインフォメーションと書かれたタープが立っていたので、そこでプラジャ・ブランカの情報をもらうことに。

ここから15kmほどで着くらしい。

一本道らしいが、念のため簡略化された地図の写真を撮らせてもらった。





いくつかの丘と少しの砂利道を通り越しながら、ようやく着いたのがここ。







湖に真っ白な浜があるなんて不思議な光景だ。

浜の入口で店を構えている人がニコニコと

おおいこっちだよ!

と教えてくれた。

急な下りを降りて下までつくとそこは紛れもなく砂浜。

自転車を押し押し入っていく。




 

するとそこの係員風の人が近づいてきて、なにも言わずともキャンプはどこですればいいのか教えてくれた。

こちらが理解できていないと知ると、今度は案内までしてくれる。

これでキャンプ代がタダなんだから、驚きである。

とりあえずテントを張る前に出店でコーヒーを頼む。

見た目は暖かそうだが、実はかなり寒い。

標高が高いためだ。

泳いでいる人や水着の人もチラホラ見えるが、あれ、絶対寒いと思うぞ。




コーヒーを飲みながらレストランの前(なんと、レストランもあるのだ!)で景色を眺めていると、男女がこちらへ来て話しかけてきた。

彼らも自転車を車に乗せて持ってきていた。

ここに来る途中、アキタニアでこちらを見かけたのだと言う。

彼らも来年には南米を自転車でまわる予定らしい。

そしてボゴタに来たら私たちの部屋にホットシャワーしにきてね、と言っていた。



ホットシャワーとは旅人向けの短期間ホームステイのようなもので、そのサイトに登録すると無料で泊まらせてもらえることができるらしい。

ホットシャワーは南米ではまあまあ登録者がいるらしく、ヨーロッパでも結構使えるという話だった。

以前にもメキシコ人のチャリダーからカウチサーフィン(内容はたぶん同じ)の話を聞いて似たようなことを書いた気がするが、

自分はこういうのにはあまり手を出したくない。

なぜならこういうのに登録している人は、おそらくなにか見返りを求めているだろうからだ。

つまり旅の話を聞きたい、そういうことだろう。

スペイン語もろくに話せず、英語も会話に不自由なくらいにしか話せないので、こういうのには向かない。

メキシカンチャリダーは「それでも別にいいんじゃない?」とは言っていたが、たぶんホストの人に「こんなはずじゃなかった」と思われながら別れるのが目に見えている。

話が聞きたいわけではなく、

以前旅をしていてその他の旅行者を支援したいから、とか、

その恩を返したい、

という人もいるだろう。



日本を自転車でまわったときもそういう人がたくさんいた。

だがどちらにしても自分は人と接するのがひどく苦手なので、結局いい結果にはならないと思う。

嫌な思い出を増やして辛い気持ちを引きづりながら旅をするなんてまっぴらごめんだ。



学生時代に日本を4/5周したころ(金と時間の問題で関東地方は行けなかった)、宮島でキャンプができそうなところを探しウロウロしていたときに、寂しげな顔をしたおじさんがこちらを見つけるや長話を始めたことがあった。

うちに泊まらせてあげたいけど、前に自転車乗り2人を泊まらせたときに金を盗まれてしまってね…

と話すおじさんの、こちらを見る目には、悲しみと憎しみが混じっていたのだった。

そんなことを毎度思い出しながら、そういうサイトに登録するのはまあまず無理だろう、と諦めているのであった。

サイトに登録はしないが、ただ彼らからはメールアドレスをもらったので、もしかしたらそっちから連絡するかもしれない。



テントをたててインスタントラーメンを作る。

暗くなる頃には、あんなに賑わっていた浜辺には誰一人いなくなった。

久しぶりに星空を見た気がする。








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