ちょっと聞いて。

今ね、山を越えようと急な斜面を必死になって登っていたんですよ。

自転車押しながら。

重いバックパック背負いながら。

空は晴天、

昼間だったのもあって体感温度は無情な暑さだったわけです。

そうなるとやっぱ体中から汗が吹き出すじゃないですか。

で、ふらふらになりながら丁度いい日陰があったんで、そこで休憩していたんですね。

汗が引いてきたころに腕を見ると粉が吹いていて、

あー、乾燥してるのかなー

なんて思ってたんですが、

触ってみるとなんかザラザラしてるし、よく見ると小さな小さな白い結晶が見えるんですよ。

塩でした。

体から塩が採れた。

汗がついた服に塩が出てきたことはよくあるんだけど、体から直接塩が出てきたのは、これ初めて。

うっそー！

と思いながらなめてみたら、

う、うまい！

たとえて言うなら、

旨味塩のような、

酢昆布のすっぱみをなくしたような味がしました。

こりゃあ犬も舐めにくるはずだわ

と犬達にペロペロされた記憶をなぞりながら納得しました。

自分がおいしいということに、なぜか喜びを感じる自分。

『テガミバチ』のステーキより、おれのほうがきっとおいしい。