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となりの国

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ゴミ屋敷のおばあさんとボク





クリスマスにサントゥアリオを抜け出す。



    ↑首都のボゴタまでは373km。非情な数値である



サントゥアリオから先へ行くと、景色はなにもない山の中へ。

そしてしばらく走ると、目のまえに唐突に崖が現れる。


そこは観光地になっているようで、レストランやレジャー案内所、ホテルが点々と現れては消えていく。



    ↑崖を見下ろせるレストランもある



    ↑パラグライダーが主流のアクティビティ。やってみたい。が、怖い

ここから道は急なくだりになり、楽に先を急ぐことができた。

高度が急激に下がったようで、気温は急上昇。

日陰に入ると肌寒かったのが、日陰でもまだ暑いほどになった。

空気が乾燥していたのも、ジメジメとした気候に変わった。

秋の終わりから突然真夏になったような気温差だ。

体感季節がどんどん変わり、体がおかしくなりそうだ。


せっかく短パンから長ズボンにしたのに、これでは意味がない。




    ↑葉切りアリも復活

20kmほどくだって今度は上り道。

自転車を押し上げる。

天気がよくなり汗が止まらない。
体力を著しく消耗している。



休憩がてらにオカリナを吹いていたら、子犬がこちらに歩いてきた。

こちらが動くとビクッと少し退く。
しかし興味はあるようで、オカリナをしまって自転車をゆっくり押して進むと、数歩前を着かず離れず小走りにテチテチ走る。

そのまま彼女に先導されて先へ進む形になった。

    ↑困り顔で道案内してくれる

後ろをチラチラ見ながら早足で坂をのぼっている。

彼女はどうやらあまり世間慣れしていないようで、車やバイクが来てもギリギリまで気づかない。

こちらが教えてあげても不思議な顔をするばかりだ。

そしてギリギリになって慌てて横っ飛びに避ける、を繰り返す。

そのうち宿が見えたので、値段を聞いてみた。

28000ペソ(1400円ほど)と高かった。

戻ると子犬はこちらを待っていてくれたようで、またいっしょに歩き出した。

その先、大きなレストランで大型の犬2匹に追い立てられた子犬は、反対方向へ逃げていってしまった。

そこは小さな村になっていた。


道の端に埋設された小さな標石には 47 の数値が書かれている。

スタート時には 0 だったので、今日は47km走ったことになる。

昼からスタートしたにしてはまあまあじゃなかろうか。

hospedaje(宿)と書かれた看板があったのでそこへ尋ねてみたが、ダラッと椅子に座りながら気だるい雰囲気のまま「部屋はない」言われた。

他のところでテントを張ってもいいか聞いたが、それも断られる。

するとそこにちょうど買い物に来ていたおばあさんが大きな目でこちらを凝視したあと、

「この先に広場があるよ」


と教えてくれ、買い物をすませると道案内してくれた。


危ないからもっと脇を歩きなさい。

とおばあさん。
草の中に落ちているゴミを拾い、使えないとわかると投げ捨てながら道路を歩く。


道の端にある草むらをかき分けていくと、そこにボロボロの小さな小屋があった。

まわりはゴミで散らかっている。

その裏手に案内された。

大きな庭のようになっていて、一番奥に物置のようなつくりの場所がある。

「広場」と言うからには公園を想像していたのだが、着いた先は彼女の家の敷地だったようだ。

トタンでできた屋根もあり、ここなら夜露や雨にも濡れないで過ごせそうだ。

おばあさんはこの小屋にすんでいて、晩ご飯を作ってくれた。

だれも泊めてくれなかったでしょう? ここの人は自分のことしか考えてないのよ!

とおばあさんが怒った顔で言う。

おばあさんは料理がとても上手で、まな板がなくても手の上でスイスイと肉をさばき、ポテトはまるで売り物のようにきれいな形と味に仕上がっていた。


物はなくても、そこら辺にある植物や拾ってきた物でなんでもまかなってしまう。
そこここに落ちているゴミに見えるものも、それぞれちゃんとした役割があった。

こんな貧乏そうな人にただおごってもらうのも申し訳ないので、こちらからもメデジンで買ったインスタントラーメンを差し出した。

なかなか通じない会話の中であーでもないこーでもないと言い合い、時間が過ぎていった。

それにしても彼女はどうやってお金をかせいでいるのだろう。


料理で使われていた材料は店から買ってきたものだった。

意思疎通を計ろうと出してくれた自転車柄のノートを覗き見ると家計簿がつけられていたのだが、お金を支払った金額は高からず低からず。

両親は小さい頃に亡くなり、子どもがいたが今は別の町へ行ってしまったと言っていた。

夜に貸してくれたライトもかなりいいもので、しかも新しい。

以前このような状況でものを大量に盗まれたので、どうしても色々考えてしまう。

夜テントに入って寝るときにおばあさんの素振りが怪しかったので、警戒しながら眠ることにした。




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