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となりの国

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青雲 … Laguna de Ipala




土曜日のイパラはソカロ(中心広場)にフリーマーケットが並び、人がとても多い。

その中を縫って町を抜け出し、広大な自然の広がる国道へ。

標高はこの辺で一段落したようで、ほとんど平坦な道が続く。

数日前とは違い、風が涼しいのが嬉しい。

この分だと汗はあまりかかないだろう。

景色も広いし平地でスピードが出せるしで、自然の中を颯爽と走っている感覚が楽しい。

イパラ火山湖を目指して走る。


    ↑たぶんこれが火山

左手に赤土の砂利道があったので入る。

方向からすると火山へと向かっているようだ。

上り坂は予想通り厳しいが、木が少なくて崖の向こうのパノラマビューがよく見渡せる。


しばらく行くと小さい集落があった。

そこを抜けると・・・

道はない。

あれ?

道が途切れたところにあった家からおばあさんが出てきたので、湖はどこか聞いてみる。

こっちじゃないよ。むこうの大きい道路をもう少し行ってから左だよ。

というではないか。

どうやら道を間違えたようだ。

念のため家の工事をしているらしい人たちにも聞いてみると、

自転車じゃ行けないだろうね。こっちからじゃ湖に行けないことはないけど1時間はかかるぞ。この道を出てから左に曲がって2kmくらい行ったらコンクリートの道があるからそっち行くのがいいだろう。

なるほどね。

道がガッタガタだったから少しおかしいかもしれないと思っていた。

30分近くかけてのぼった坂道を5分でおりて元の道に戻る。

通常ルートを目指していると、対向車線のトラックが目の前で止まり、スーツを着た運転手が全力疾走で元来た道を戻っていった。

なんだろう。

荷台の荷物でも落としたのかな。

と想像しながらこちらもそのスーツマンについていく形になる。

彼の向かう先には荷物ではなくバイクが倒れている。

横にはがっちりした男が立ってバイクを見ている。

スーツマンが慌ててバイクを立て直す。

あ、

これは

轢いたな。




近づくとバイクの横の男は顔半分が血だらけになっている。

スーツマンがバイクを押しながら男に声をかけ、トラックに乗るように指示しているようだった。

男は意識が朦朧としているのか、反応が薄くただボーっと立っている。

若干フラフラしているようだった。

こちらはなにもできることがないのでそのまま走り去った。

それにしてもよくひき逃げしなかった、とそこに感心してしまった。

中米だったら人を轢いたあと、バレたくないから逃げそうなものだ。

が、これは偏見だったのかもしれない。

いや、これはレアなケースかもしれないのでわからないが。

なかなか着かないなーと思っていると、道路は小さな村に入る。

店があったので買い物口の窓からカップラーメンと炭酸ジュースを頼む。

グアテマラの小さい店では半分以上がこのような注文形式だ。

格子から店内を見回し、もしくは店員に訪ねて欲しいものを買うのだ。

メキシコからこのような店はあったが、ここまで多くはなかった。

日清ラーメンで舌を火傷しながらスープまで完食。

塩分で体がみなぎる。

その村の終わりに湖行きの看板が立っていた。

そりゃあ観光地だろうから看板くらい立ってるよなぁ。

そのやじるし通り左へ曲がる。

が、ここからが大変だった。

ものすごい急な坂なのだ。

さっきとは比べ物にならない。

あと一息で垂直になるんじゃないか。

そんな坂を自転車を引き連れて、十数歩進んでは休み十数歩進んではまた休み、を繰り返した。





坂の上から馬に乗ったおじさんがかっぽかっぽとやってきて、こちらに話しかける。

あとからカウボーイ風の仲間2人も加わり、それからすぐに別れた。

坂の下で銀色に光る口径の大きそうな拳銃を渡すところが目に入った。

坂の上にはこれまた集落があり、たださっきよりは立派な家が建っている。

駐車場のようになったところに売店があったのでエナジードリンクを買って飲み、荷物を入れ替えて服を取り替える。

iPadで英語の勉強をしている親子に、自転車をここに置いていいか聞いてみる。

よろこんでOKしてくれた。


    ↑目の前には牛が…

自転車を置いておくのは心配だがしょうがない。

あとは運だ。

岩が階段状になった山道を、バックパックを背負いながら歩いて登る。

さっきの坂よりは全然楽に登れる。

これなら休憩もあまりいらなそうだ。


    ↑またも牛が道を遮る

眼下には白んだ景色が広がり、白というよりも青く見えた。

青雲、という単語と とあるCMが頭に流れてきた。



地元登山客がけっこういるみたいで、下山してくる人がたくさんいた。

「オーラ」「ブエナ」「ブエノス」をお互い連呼しながら通り過ぎる。

すれ違い様に挨拶するのはどこの国もいっしょのようだ。

湖近くにはまた売店があり、こんなところまで商品運ぶの大変だろうと思いながら飲み物とビスケットを買った。

腹がすぐに減ってしまう。

ゲートマンがいて、名前や国籍などを書いたあと、10Q(ケツァールと読む、1Q=13円)払えと言う。

どこでも料金がかかるのだなー。

人の手に渡っていないすばらしい自然にこそ興味があるのにな。

ちなみに、看板によるとグアテマラの人は5Qで外人が10Qらしい。

なんでだろ。

市民プールの「市内の人600円・市外の人800円」っていうのと一緒かな。

あれもなぜだかよくわからんけど、地元のプールに入ってろってことだろうか。

じゃあ地元の湖を見ていろってこと?

ゲートマンのところから50歩ほどで火山湖ラグーナ・デ・イパラに到着。



湖畔には釣りをしている人が一人いるが、他はだれもいない。

湖はきれいで、想像より少し大きい。





    ↑透明度はこれくらい



静かだ。

森の中のような鳥の声が聞こえる。

湖岸に吹く風。

それで水面が波打つ。

まわりにはキャンプできる設備がある。

できることならキャンプしたいが、さすがに自転車を置いて一人でする気も起きない。

それにキャンプ道具は自転車に残しておいてある。

辺りに漂う静けさを堪能し、それから来た道をもどった。


この湖はいいものだった。
ただ自転車で来ることはおすすめしない。
車で中腹まで登れるので、そうしたほうがいいだろう。



ゲートマンのところまで戻ると呼び止められ、上の方を案内してくれた。

物見やぐらがあって湖全景を見渡せるらしく、写真のベストスポットだと言う。

今は自転車が心配なので早く戻りたいのだが、せっかくわざわざ紹介してくれたので覗きに行ってみた。

たしかに高台から全景を見下ろせるが、下からの景色が好きだ。

反対側を見ると、ここから遠くないところに町が見えた。

今日はあそこに泊まることにしよう。


    ↑改めて見るとこっちからの景色もいいなぁ

降りていくときには足がガクガクしてバランスを崩しそうになる。

登山なんて久しぶりだもん、こりゃあ明日には筋肉痛だろう。

いや、あさってかもしれない。

それなら明日はまだ先へ進めるな。


まだまだ登山者もいるようで「ブエナス」「オーラ」「ブエノスタルデス」と言い合いながら通り過ぎる。

人が多いのに誰もいないちょうどいいタイミングで湖を見ることができたみたいだ。

自転車は無事で荷物も盗まれてはいなかった。

あんなに時間がかかった坂を数分で駆け下りた。

ブレーキが泣いていたが、足を動かさずとも出せるそのスピードは疲れた体には心地よかった。




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