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となりの国

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トタ湖への受難

熱は下がったので、パイパの町から出て行くことにした。

後ろ髪を引かれる思いだが、先へ行かなくては。

ここでかなり金も時間も使ってしまった。

近くの店で水を買い込む。

袋詰めの水をアクアボトルに入れ替えていると店のおばさんがマンゴーを手に持ってやってきた。

くれるらしい。

ほとんど何を言っているのかわからなかったが、仏頂面な顔で

いい旅をしてね

という言葉とともに送り出してくれた。

やっぱりこの町はいいところだった。

途中カフェでエンパナーダ(餃子形の揚げ物、ここら辺のエンパナーダは味のしみ込んだ米がたくさん入っている)を2つ買い、食べながら走る。

今まであまり自転車を飛ばしながら物を食べることをしていなかったのだが、これはなかなかいい。

食べ物がおいしく感じる。

遠足で敷物を敷いて食べる弁当に通ずるところがある。

片手でしかハンドルを握れないのが欠点だろうか。

ここから先の道も軽い下り道がずっと続いた。

やはり咳き込んでしまうが、苦しく感じることもなく落ち着いて先へ進むことができた。

どんどん道が下がるので気温も上昇する。

後半はかなり暑かった。



    ↑途中のなにもないところに高速のサービスエリアらしき建物を発見。こっちにもあるんだね

パイパから走り出して1時間ほどでドゥイタマの町が見えた。


しかしほとんど距離を走っていないので、ここは無視。

本当はちょっと覗いて行こうかとも考えていたのだが、なんだかこのままタイヤを止めたくなくて、そのまま横を通り過ぎてしまった。



    ↑ドゥイタマ入口のモニュメント。帰りに寄ってこーっと

そこから小さなTibasosa(ティバソサ)という雰囲気のいい村をこれまたノンストップで通り過ぎ、着いたのはSogamoso(ソガモソ)という大きめの町。

この町から、次の目的地であるLago de Tota(ラゴデトタ=トタ湖)とMongui(モンギ)という村への分かれ道となる。

ソガモソはちょうど中間にあるというわけだ。

両方行く気なので、時刻は2時とまだ早いが今日はここで泊まり、どのようにまわるか作戦を練る。

こういう大きな町はあまり好きではないので、できれば滞在したくはないのだがしょうがない。

予想通りホテルの値段は高く、なんとか小さな部屋を20000ペソにしてもらい落ち着く。

少し町をまわってみる。

中心部にはテントが並んで建てられており、そこで日本人形のようなものやら怪しい薬やら本やらたくさんの雑貨が売られていた。

祭りではなさそうだが、なんだか変わったところだ。




    ↑右側に見えるのが日本人形風の置物。真ん中の金色のは招き猫



    ↑薬がたくさん。魔女が作った薬みたいな怪しいものもあったりする



    ↑大きくて目立った壁だったので何かと思ったら墓だった



    ↑感じがあしらわれたクッション。ここのホテルの毛布も漢字が書かれていた。はやっているのだろうか


 

    ↑
本当はここCocuy(コクイ)にも行きたかったのだが、ここから200km近くあって遠いし、標高5000mくらい登らなくてはいけないらしいのでやめた。


この大岩があるPulpito de Diabloではなく、少し離れた他のルートだともう少し簡単に登れるらしいのだが、さすがに、ね。


ちなみにこのコクイはコロンビアで2番目に高い山だそうだ。



さて、それではホテルの室内で作戦会議。

ここからどういう風にまわろうか。

目的地は2ヶ所。

モンギとトタ湖だ。

モンギへ先に行き、そこから帰ってきてそのままトタ湖を目指すのがいいのではないか。というのが第一の案。

トタ湖へ行くとおそらくキャンプになるだろう。

ただ体の調子から言ってキャンプはあとにしたほうがまだいいのではないか、そう考えたのだ。

そして第2の案、ここでもう1泊部屋をとり、荷物を置いて軽い状態の自転車を使い、一日でトタ湖を観光して戻ってきてからモンギへ向かうというもの。

こうすることによって、宿泊費はかかるが、わりかしスムーズに事が進むことになる。

これは予想だが、地図を見る限りモンギへの道もトタ湖への道ものぼり坂が続くのではないか。

そんな気がする。

そうなると荷物を抱えての走行はかなり辛いものがある。

体調のことも考え、できるだけ易しい方法で運行したい。

長い時間考えたが、これは第2案のほうがよさそうだ。

では明日ホテルの従業員にもう一泊すると伝えよう。



で、明日。

もう一泊する旨をを伝えると、

なんと! この日泊まると値段は30000ペソになるらしい。

この日は土曜日で+5000ペソ。

それとなんとか(何言ってんのかわからなかった)が付いてもう+5000ペソ。

ちょうどチェックアウトするおじさんが色々交渉してくれたようなのだが従業員の態度は変わらず、

こんな狭くて蚊も飛んでいてしかもネットが通じないところにそんな金出せるか!!!

との思いを胸にホテルを出て行った。

他はもっと高いよ

という従業員は無視。

だってホテルに泊まらんもん。

そう、ホテルを出た事で作戦は変わった。

先にトタ湖へ行こう。

土曜日でどこもホテルの値段が上がるのなら、今日はキャンプしてやりすごしたほうがいいではないか。

それで明日モンギへ向こうことにしよう。

そう決めてトタ湖方面へ走り出したのだった。

ちょうどこの日は雲ひとつない快晴だった。




    ↑トタ湖は25kmか。お、余裕じゃね?

トタ湖への道は予想通りののぼりだった。

いや、予想以上というべきだろう。

自転車に乗れないくらいの傾斜だ。

しかもずっと。

平な道もないし、ちょっとでも下がるところすらない。


  

  キツい分、景色は素晴らしい。

 


   ちょっとずつ登っていく。



    ↑野良犬が物欲しそうにこちらを見ている




水がなくなったところで運良く小さな店を発見。

朝食を軽くしか食べていなかったので、エンパナーダくらいあるだろうと聞いてみるが、チップスしかない。

それでもいいかと思ったが、そこの客達からこの先にレストランがあるという話を聞いたため、水のみ補給。

peaje(道の料金所。至る所にあり、ここを通る車は指定の料金を払わなくてはならない。自転車は無料)を通り越してさらにゆく。

が、腹が減ってもうだめだ。

力つきた。



ビールの名前とポスターが大々的に貼ってある小さな小屋を見つけた。

ここも店だろうと寄ってみると、そこにいたハットをかぶったじじいが突然何かわめき散らしながらその扉を閉めた。

ここは店じゃないのか

そう聞こうとしたが、もう疲れすぎていて声が出ないし、じじいの態度に次第に腹が立ってきたので、その腹いせに店の前にあったベンチに腰掛けて休む。

息がなかなか整わない。

じじい達がなにか言っているが、わからないので無視を決め込む。

だいたいこんなのに口聞きたくないではないか。

人がまわりに集まる中、ゆっくり休んでから出発。



その500mほど先にガソリンスタンド、それから宿泊施設つきのレストランが2軒見えた。

ここまで15km。

かかった時間、5時間。

今日はもうここで休もう。

きっとまだ湖まで10kmくらいあるんだろうから。

そう思っていました。

実は、坂をのぼった100m先に村があり、そこからトタ湖が見えることを

このときはまだしらない。



    ↑夕暮れ、ホテルから見える景色は黄金に輝いていました。





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不機嫌な町とやすらぎの町、パイパ

3泊ののち、いよいよトゥンハを出発。

風邪の調子は全然よくないが、ここにずっといるわけにもいかない。

街中をまっすぐ突き走り、先の町までの距離が書かれた看板が見えた。

予想していたより近いようだ。

できればDuitama(ドゥイタマ)まで行きたいが、この体調じゃ無理かもしれない。

そのときはPaipa(パイパ)で様子を見よう。

一瞬でそう計画した。

町を出ると、道の状態は意外とフラット。

もっとアップダウンの激しい山道になるかと思っていたが、緩い下りが続き風邪を引いている身としては助かる。

しかしそれでも喉に乾燥した空気がはりつき、咳こんでしまう。


    ↑途中で朝食と昼食をかねて頼んだアレパとコーヒー



    ↑ここのアレパもコーヒーも素晴らしくおいしかったし、シナモンまでテーブルに備え付けてあって嬉しかったが、他のところよりもちょっと高かった 



標高が下がってきているらしく、気温は少しずつ上がっていった。

空は曇っているが、それでも風の中に少し暖かいものを感じる。

豊かな自然のなか、ポツポツと家が現れては消え、隣には線路が並走している、と思ったら今度は細長い池の横を通る。

衝撃的な風景はないが、なかなか穏やかなおもしろさのある道だった。




    ↑この日は晴れ。景色がきれいに見える



    ↑こんなやさしい坂道を通った



    ↑線路が走る道

 

その細長い池の端につくと、道が右に分かれていて「PAIPA」の文字が書かれた門が現れた。

ここがパイパか。

観光に力を入れている、とようなスペイン語が書かれている。

ここには湖が奥にあるらしく、そこが見所のようだ。

時間は早いが喉と鼻の具合が酷くなってきたので、今日はここで休もう。

そう思い入口付近のホテルへ。

しかし宿泊を断られる。

ネットで外国人の番号を調べなきゃならないんだ。パスポートはないだろ?あるのか。でもだめだね。

というしっちゃかめっちゃかなことを言われた。

その先にあったホテルに入る。

25000ペソだと言われ、一応勧められるがまま部屋を見ながら諦めようかと思ったとき、バストイレ別でいいなら20000ペソで部屋があると言われた。

早くそれを言うんだよ!

不信げで感じの悪い女性のスタッフに案内され、なんとか部屋を確保。

中心部あたりをまわってみるが、なんだかここの人達はみんな感じが悪い。

明日さっさとここを出ようと決め、この日は休んだ。

が、次の日から熱が出てしまい、結局この町に一週間近くの泊まることとなる。


    ↑パイパの街並


第一印象は最悪だったこの町も、慣れてくるととてもいいところに変わった。

これまで雨雲がずっと続いていた日々がうそのように、熱が出た次の日から空は晴天。

窓から見えるうららかな陽光と田舎じみたその景色を見ていると、どうしても外へ出て行きたくなる。

そんな誘惑に負け、フラフラしながら町をまわった。

    ↑窓からこんな風景が見えるのだ

近くにある安めのレストランはこちらの顔を覚えてくれ日に日に態度が柔らかくなるし、ビタミン補給にフルーツを探しにかよったデザート屋では「明日イチゴクリーム作っておいとくから」と笑顔で言われる。

緑をまとった丘陵は美しくそびえ、湖までの道は広く清潔でのどかだった。




ロマネスク様式(で合ってる?)の荘厳な、でも見方によってはかわいらしい教会。

そのまわりの広場では人々がのんびりベンチに腰掛け、アイスクリームをほおばっている。









    ↑このアイスは800ペソ(40円)。とても安い


    ↑広場で売っていたマンゴーの細切り。
これまで何度かいろんな人に買ってもらったことがあるのだが、いつも塩とレモン汁だった。
ここで初めて甘いバージョンを食べたのだが、甘いソースとホワイトチョコソース(練乳かもしれない)がかけられていてこれはこれでおいしかった。
そのときの写真を撮っていなかったため、写真は塩こしょうレモンのやつ。
こっちのほうがマンゴーの香りが引き立つ。


ホテルのスタッフ達は、こちらが帰ってチャイムを押す度にはにかんだ笑顔を向けてくれるようになった。

一週間いる間にこの町が気に入ってしまった。

すてきなところじゃないか。



やはり、長く居てみないとわからないことがたくさんあるのだな。

でも3年も住めば嫌なところが見えてしまうかもしれないので、やっぱり一週間くらいがちょうどいいのかもしれない。

もう少しいたい、と思うところで引き下がるのがやっぱり一番いいのかもね。





通い慣れたレストランの料理。
安くておいしい。
初めは怪訝な顔をして注文を取ってきていたが、数日経つと笑いかけてくれるほどまでになった。


停電になった夜はろうそくを立ててくれた。








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夢のあと

 





出発の日の朝、起きると喉が痛かった。

風邪を引いてしまったのだ。
自分の風邪の引きやすさが恨めしい。

体の疲れもあり精神的にもまいっていたし、それから雨に濡れたことや夜の気温の低下のせいでもあるだろう。

しかし出発を延ばすことはできない。

ひどい風邪ではなかったのが救いだ。

最後の挨拶にと、ジョンがバイクで何人かの家をまわってくれた。

途中、

ensalada de frutas(エンサラーダデフルータス)を食べさせるのを忘れていた。ぼく大好きなんだ

と、フルーツにクリームとチーズを振りかけたものをごちそうしてくれた。

このデザートはメキシコ以南のジュース屋などで時々目にしていて気になっていたのだが、お金がもったいなかったのでこの日まで食べたことはなかった。

味はとてもクリーミー。

かかっているチーズがピザ用の細切りチーズみたいなもので生で食べても大丈夫かちょっと心配だったが、底に入っていたバナナとパパイヤとよく合っていておいしかった。



    ↑折よく風邪のときだったので、果物を食べられるのはうれしい。ありがとうジョン!



    ↑中はこんな感じ

丘の上からベンタケマーダの町とそれを取り巻く丘や山の写真を撮る。

思い出に、というのもあるが、それよりなによりその景色が美しかったから。



祭りなんていらなかったんだ。
この町だけで十分だった。

挨拶回りをしていたら時刻は午後2時をまわってしまった。

ジョンにお別れを言い、急いでトゥンハへ出発する。

坂が多く大変だが一度通ったことのある道なので、先がわかっている分精神的な苦痛はない。

3時間で町に到着し、前に泊まったホテルに入った。

別にこのホテルが気に入っていたわけではなかったのだが、値段は高いほうではないし掃除も毎日されているしネットも繋がるのでここにした。

まあ一番の理由は新しく探すのが面倒だったからなんですけどね。

この日の夜から風邪は酷くなり、ここに数泊して様子を見ることにした。

あまり動き回らないようにし、体力を温存するように気をつける。

土曜日にホテルの裏手で市をやっていたので覗きに行った。

前に来たときにもやっていたのだが、そのときはそこに停まっていた一切れ1000ペソ(50円)の激安ピザを買いこんだだけで見学はしなかった。

いつも人気のなかった通りに人がごった返し、フルーツの名前を高速で読み上げる声が響き渡っている。

両手に袋を持った買い物客が何人も通ってはすぎていく。











スイカ、イチゴ、マンゴー、キャベツ、卵、トマト、バナナ・・・

たくさんの売り物が地面や台のうえに山を作り、カラフルな道端を作り上げていた。

その日の夜、なんとなく体が欲しがっていたコーヒーを探しにその場所に行ってみると、そこには誰もいなく、その代わりに大量のゴミが落ちていた。

それらを漁っている犬と人が数人。

これは誰が片付けるのだろう。



そのそばにあったはずの、前回来たときにコーヒーとパンを買ったカフェはなくなっていた。

窓に”家売り出し中”の張り紙。

2週間前まではあったのに。

そこのロールパンはおいしかった。

ないとわかると余計に訪れたくなる。

しかしもうそれができないなんて。

とても不思議な気分だった。





    ↑暗いのでぶれてしまったが、夜にコーヒーとパンを食べているときに寄ってきたネコ達。
     膝にまでのっかってきたネコは初めてだ。




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